一般に紫外線洗浄・表面改質照射装置といわれる場合では、184.9nm、253.7nmの短波長を主波長として、効率よく放射する低圧水銀ランプが使用されています。光のエネルギーと運動量の塊は、フォトンとギルバート.N.ルイス(Gilbert Newton Lewis)により命名され、光子、光量子ともよばれます。紫外線の各波長は、波長が短ければ短いほど、高いエネルギーを持っており、184.9nm、253.7nmの波長では多くの有機物の結合を切断することが可能です。


低圧水銀ランプの分光エネルギー分布

低圧水銀ランプの波長分布
低圧水銀ランプの波長分布
縦軸:相対エネルギー(%)、横軸:波長(nm)

低圧水銀ランプは、184.9nmと253.7nの波長の光を効率よく発光できるランプです。


光の波長とエネルギーの関係

ランプの波長と光エネルギーとの関係式は、下記の式であらわされます。

E = hc λ

E エネルギー J
h プランク定数 6.62607×10-34 Js
c 真空中の光の速度 299792458 m/sec
λ 波長 m

※ プランク定数:量子力学の創始者マックス・プランクに由来する光子のもつエネルギーと振動数の比例関係をあらわす比例定数。


この式より、低圧水銀ランプの主波長184.9nm、253.7nmのそれぞれの持つエネルギーを求めると、下記の通りになります。

184.9nm の波長で、647kJ/mol(6.7eV)
253.7nm の波長で、472kJ/mol(4.9eV)

代表的な分子の結合エネルギーは『表1 代表的な分子の結合エネルギー』の通りで、低圧水銀ランプの持つ光エネルギーで分子鎖を切断する事が出来、同時に発生するオゾンの効果も合わせ、洗浄・表面改質の効果が期待できます。


表1 代表的な分子の結合エネルギー
結合分子 結合エネルギー 結合分子 結合エネルギー
O-O 138.9 kJ/mol C-H 413.4 kJ/mol
C-N 291.6 kJ/mol H-Cl 431.8 kJ/mol
C-Cl 328.4 kJ/mol C-F 441.0 kJ/mol
C-C 347.7 kJ/mol O-F 462.8 kJ/mol
C-O 351.5 kJ/mol O=O 490.4 kJ/mol
Si-O 369.0 kJ/mol H-F 563.2 kJ/mol
N-H 390.8 kJ/mol C=C 607.0 kJ/mol

波長と光エネルギーの関係式の通り、波長が短くなればなるほど、エネルギー量は大きくなり、表面改質効果を上げることは出来ますが、一般大気中での光の届く距離や装置価格など制約条件が増えてきます。

例えばエキシマ洗浄表面改質装置(主波長172nm)では、分子結合エネルギーの高い高分子材料の表面改質を行うことが可能です。


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