お客様の声 桐蔭横浜大学様

 お客様のプロフィール

「低コスト」「軽量」「柔軟」という特長を持ち、
次世代太陽電池として注目を集めるペロブスカイト太陽電池の生みの親として知られる。



宮坂 力
Tsutomu Miyasaka 

桐蔭横浜大学 医用工学部 特任教授/
東京大学先端科学技術研究センター・フェロー

1976 年 早稲田大学理工学部応用化学科卒業
1978 年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1981 年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
1981 年 富士フイルム株式会社入社
2001 年 桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授
2005 年 東京大学大学院総合文化研究科客員教授
2017 年 東京大学先端科学技術研究センターフェロー

 ご購入された装置

ASM401oz


UVオゾン洗浄表面改質装置 ASM401oz

バナー_ペロブスカイト太陽電池

Question 01

ペロブスカイト太陽電池の発明の経緯や思いをお聞かせください。

偶然の出会いがいくつも重なり、
ペロブスカイト太陽電池の技術は進化してきました。

ペロブスカイト太陽電池の研究において、私はほとんどなにもしていないとよく言っています(笑)。ペロブスカイト太陽電池を発明でき、実装化目前まで進化させられたのは、優秀な学生や研究者たちとの出会いがあったからです。

もともと私の研究室では色素増感太陽電池をフィルム型にするための研究を行っており、ペロブスカイト太陽電池の研究を始めたのは2006 年です。私が立ち上げたベンチャー企業のペクセル・テクノロジーズ(株)に入社した手島健次郎さんが東京工芸大学の元講師で、彼がペロブスカイト太陽電池のアイデアを思いついたのです。手島さんの教え子で大学院から私の研究室に来た小島陽広くんという学生が、色素増感をペロブスカイトに換える実験を始めました。ペロブスカイトというのは、素材名ではなくて結晶構造の名称です。

一般的には酸化物のペロブスカイト結晶が強誘電性を持つことで知られ、超音波診断機などに使用されていました。しかし、酸化物ではなくヨウ素などのハロゲン化物からなるペロブスカイトの構造に光を吸収して電気に変える性質があることを発見したのが小島くんです。

小島くんは私の指導のもとで研究を進め、光を吸収して電気に変える実証実験にも成功し、2009 年には成果をまとめた論文を出しています。しかし、当時は色素増感型の電池のために電解液を使っており、光電変換効率は3.8%だったため、まだ大きな注目を集めるまでにはいたりませんでしたね。

その後、桐蔭横浜大学の大学院で私が指導していた村上拓郎くん(現在は産業技術総合研究所・有機系太陽電池研究チーム長)がスイス連邦工科大学ローザンヌ校に留学し、後にオックスフォード大学の教員となるヘンリー・スネイス氏と知り合いました。

村上くんがペロブスカイト太陽電池について話をしたところ、スネイス氏が興味を抱き、電解液を固体化し、ペロブスカイトを固体の薄膜にしたところ、変換効率が大きく高まることを発見したのです。

そして、スネイス氏と私の研究室との共同研究によって固体化の研究を進め、2012 年にはペロブスカイト太陽電池の変換効率が10.9%まで高まりました。10%を超えたことで実装化の実現性が高まったことで一気に世界中から注目されるようになり、研究が大きく進んでいったのです。

このように、偶然の出会いがいくつも重なり、ペロブスカイト太陽電池の技術は進化してきました。だから私はいつも、たくさんの人との出会いがあったからこそペロブスカイト太陽電池が生まれたと言っています。


桐蔭横浜大学宮坂先生インタビュー




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Question 02

ペロブスカイト太陽電池の現在の課題について教えてください。

量産できる生産設備を整えることですね。
研究で発揮できている性能を、工場での量産時に再現できるようにしなくてはなりません。

ペロブスカイト太陽電池は、技術的にはもう実装可能なレベルまで来ています。耐久性の課題はまだあるものの、それを解決するための新たな技術が日々生まれている状況です。着実に耐久性能は向上してきているので、実装化できるレベルになるのは時間の問題でしょう。

現在最も課題となっているのは、量産できる生産設備や販売の仕組みを整えることですね。

研究で発揮できている性能を、工場での量産時に再現するための生産設備を用意する必要があります。また、ペロブスカイト太陽電池は鉛を含んでいるため最終的には販売企業が回収しなくてはならず、その仕組みの構築が販売するうえでの課題になっています。

私のもとには今、数多くの自治体などからペロブスカイト太陽電池を設置したいという要望が来ていますが、提供できる製品が足りない状態です。設置する場所の選定までしてくれているのですが、ご要望にお応えすることができません。

このような状況を改善し、ペロブスカイト太陽電池の開発競争において日本が世界のトップランナーとならなくてはいけないと思っています。私たちもペロブスカイト太陽電池を発明した組織として自分たちにできることをしようと思い、ペクセル社から小型モジュールの販売を開始しました(2024 年12 月)。販売先には法人だけでなく個人のお客様もあるなかで、インボイス制度などにも対応できる方法を考え、最後に使用済みのペロブスカイト太陽電池を買い取って鉛を回収する仕組みを整備しています。

このように私たちが販売の仕組みを示すことで、まだ販売に踏み切れていない企業の後押しをできればと考えています。そうすることで、ペロブスカイト太陽電池の社会実装化に貢献していきたいですね。

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Question 03

ペロブスカイトの将来性や今後の見通しについて教えてください。

ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素の埋蔵量は、
日本が世界で最多と言われています。

太陽光発電において現在主流になっているシリコン太陽電池と比較し、圧倒的に低コストで製作でき、さまざまな場所に設置できるペロブスカイト太陽電池には大きな可能性があります。

ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素の埋蔵量は日本が世界で最多であり、地球上のヨウ素の8 割が日本にあるとも言われています。ペロブスカイト太陽電池の製造に必要なヨウ素は少量であるため、国内でかなりの数を製造しても原料が逼迫するような事態にはなりません。原料を国内で調達できるのは大きなメリットであり、ペロブスカイト太陽電池の開発競争において日本の優位性は高いと言えます。

シリコンを用いた太陽発電パネルの製造・販売は、気づけば中国が世界のシェアを席巻していました。そして中国は今、ペロブスカイト太陽電池を工場で製造し販売を始めています。これは投資家による多大な支援があるためです。日本の将来を考えると、そうした中国との開発競争に負けるわけにはいきません。

また、日本のエネルギー自給率は約13%程度。国内で使用するエネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼っている状態です。エネルギー安全保障の観点からこの状況は改善が必要であり、エネルギー自給率は70%以上を目指すべきだと思います。ペロブスカイト太陽電池は、日本のエネルギー自給率を高める有効な手段になるはずです。各世帯が少量ずつでも自家発電するような社会になれば、日本全体で見たら相当なエネルギー量になります。ペロブスカイト太陽電池を普及させることで、そのような未来を実現していきたいですね。

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Question 04

UV オゾン表面改質装置(UV オゾンクリーナー)についての お考えを教えてください。

基盤の表面処理は大学の実験室でも必ず行うので、
私たちもあすみ技研さんのUV オゾン表面改質装置を使用しています。

ペロブスカイト太陽電池の開発はガラスやプラスチックの基板の上に複数の層を成膜するのですが、性能や耐久性を高めるためには、基板と層の密着力を高める必要があります。そして、密着性を向上させるために行うのが、基板表面の洗浄です。基板の表面処理は大学の実験室でも必ず行うので、私たちもあすみ技研さんのUV オゾン表面改質装置を使用しています。
いかに密着性を高めて成膜するかが、ペロブスカイト太陽電池の製造技術における重要なノウハウです。そこに関わってくるUV オゾン表面改質装置の性能も、ペロブスカイト太陽電池の品質を高めるうえでは当然大切になってきます。

宮坂先生、代表岡写真



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Question 05

今後、あすみ技研に期待することは?

湿度や照射時間など、どのような条件で表面処理を行えば成膜の密着性を高められるかを、あすみ技研さんが示してあげると良いかもしれません。

ペロブスカイト太陽電池に関わっている方の多くは化学が専門です。そのため、エレクトロニクス素子の分野で知識が求められる基板の表面処理については、よくわからないことも多いのです。UVオゾン表面改質装置を販売される際に、湿度や照射時間など、どのような条件で表面処理を行えば成膜の密着性を高められるかを、あすみ技研さんが示してあげると良いかもしれません。
また、より広い面積を均一に洗浄できるUVオゾン表面改質装置を提供してくれたら嬉しいですね。現行の製品よりも処理面積の広いUV オゾン表面改質装置を期待して待っています。

宮坂先生取材写真


UVオゾン洗浄表面改質装置


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