UV洗浄表面改質装置コラムのページにご訪問いただき、ありがとうございます。本日のテーマは「水銀に関する水俣条約について(以下、『水俣条約』)」です。よろしくお願いします。
突然ですが、皆様は蛍光灯やUVランプの発光原理をご存じでしょうか?
一般家庭でも使われる蛍光灯と工業用で使われるUVランプ。実は発光原理はほとんど同じでどちらにも水銀(Hg)が使用されています。ランプの発光原理についてご興味ある方はこちらのコラムもご一読ください。
この水銀という物質は有用な化学的特性を持つ一方でマイナスの側面もあり、本日のテーマである水俣条約は水銀が人間の健康や自然環境に与える悪い影響、つまりはリスクを減らすための包括的な規制を定める国際条約になります。
水銀の使用について規制はあるのですが、冒頭で出てきました蛍光灯はこの規制には該当しません。明日から蛍光灯が使えなかったら困りますよね。
お客様からのお問い合わせに『UV洗浄表面改質に使われる低圧水銀ランプは、水俣条約で将来的に使用できなくなりますか?』とのご質問をいただくことがございますが、UVランプについてもこの規制には該当しません。
本コラムでは、水俣条約で定められている水銀の規制が一体どういった内容なのか。そしてその規制に対してUVランプはどのような位置づけで何故対象とならないのかということについて書いていこうと思います。
少し難しく、カタい感じにはなってしまうとは思いますがご興味ある方はぜひ。
それではまいりましょう!!
さて、冒頭で水俣条約は水銀使用に関するリスク低減の為の包括的な規制を定める国際条約というように説明はしましたが、具体的にはどういうことなのでしょう。以下、条約の概要で経済産業省のホームページからの抜粋になります。
水俣条約とは
水銀に関する水俣条約とは、水銀の一次採掘から貿易、水銀添加製品や製造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に至るまで、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を定める条約です。2013年10月に熊本県で開催された外交会議で、採択・署名が行われました。2017年5月18日付けで、締約国数が我が国を含めて50か国に達し、規定の発効要件が満たされたため、本条約は2017年8月16日に発効することになりました。
条約の目的は、『水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護する。 』ことです。
2013年の外交会議が、熊本市と水俣市で行われたので、『水俣条約』と呼ばれています。当時の岸田外務大臣が署名されています。
2017年8月16日の発効です。最近といえば最近ですね。
続きまして条文の内容の一部です。こちらは環境省資料からの抜粋になります。
条文の内容
- 水銀の輸出に当たっては、輸入国の書面による事前同意が必要。
- 歯科用アマルガムについて、使用等を削減。
- 鉱山からの水銀の産出について、新規鉱山開発は各締約国での条約発効後に禁止。既存の鉱山からの産出は各締約国での条約発効から15年以内に禁止。
- 石炭火力発電所、石炭焚産業用ボイラー、非鉄金属精錬施設、廃棄物焼却施設、セメント生産施設(附属書D)を対象に、排出削減対策を実施。
- 電池、スイッチ・リレー、一定含有量以上の一般照明用蛍光ランプ、石鹸、化粧品、殺虫剤、血圧計、体温計などの水銀含有製品(附属書A、一部例外あり)について、2020年までに製造、輸出、輸入を原則禁止。(年限については、第6条に基づき、国によって必要な場合、最大10年間まで延長可)
- 条約は50カ国が締結してから90日後に発効する。
条文の主だった内容と弊社装置に関係ありそうな部分をピックアップしてみました。弊社装置に深く関係しているのは「照明・ランプ」に関わる内容になると思いますので、この部分をもう少し掘り下げて見ていこうと思います。
コラム冒頭で「蛍光灯にもUVランプにも水銀は使われていますが、規制には該当しません」と説明しましたが、それについて環境省と経済産業省ホームページからの抜粋です。
特定水銀使用製品及びこれを部品として使用する製品
- 2020年12月31日から開始される規制により、一般照明用の高圧水銀ランプの製造及び輸出入は、その水銀含有量にかかわらず原則禁止となります。
- 2021年以降も、一般照明用のHIDランプのうちメタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、バラストレス水銀ランプの製造・輸出入は可能です。なお、この規制は一般照明用の高圧水銀ランプの使用、修理・交換及び販売を禁止するものではありません。
- UVランプは一般照明用以外の特殊用途用ランプに該当するので規制の対象外となります。
- 一般照明用のコンパクト形蛍光ランプ及び電球形蛍光ランプで定格消費電力が30W以下で水銀含有量が5mgを超えるものに限り規制の対象となります。
- 一般照明用の直管蛍光ランプで定格消費電力が60W未満で三波長形の蛍光体を用いたものの中で、水銀含有量が5mgを超えるものに限り規制の対象となります。
- 一般照明用の直管蛍光ランプで定格消費電力が40W以下でハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものの中で水銀含有量が10mgを超えるものに限り規制の対象となります。
特定水銀使用製品及びこれを部品として使用する製品
(経済産業省ホームページ)
UVランプは紫外線発光の特殊用途(「特殊な波長分布を持つもの」)であるため、上記の通り「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」が規制する「特定水銀使用製品」には該当しません。
現時点では、低圧水銀ランプの主波長(184.9nmおよび253.7nm)に関しては、UV-LEDも開発されておらず、水銀無しには代替できないのが現状でもあります。
というわけで、今後とも弊社UV製品をご愛顧のほど宜しくお願い申し上げます!!
最後になりますが、
2022年の3月にはバリ島で「水銀に関する水俣条約」の第4回締約国会議が開催されました。そこで2025年までに水銀を含んだ電球形蛍光灯・冷陰極蛍光灯・撮影用フィルムの一部・印画紙や人工衛星の推進剤といった製品を徐々に廃止していくが決定。その一方で直管蛍光灯は意見の隔たりから廃止の決定には至らなかったとのことです。
水銀という物質は有用な化学的特性を持つ一方でマイナスの側面もあると冒頭で書きましたが、有用な部分以上にその危険性に注目が集まり、その利用についてはどんどん縮小されていく方向にあると言えるでしょう。
ですが水銀は今の我々に重要な物質であることは間違いありません。水銀もオゾンも正しく恐れて、上手く付き合っていく意識が大事なのではないかと個人的には思います。
それでは今回はこのあたりで。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回コラムもよろしくお願いします。