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今回コラムはUV洗浄表面改質処理をした樹脂材(アクリル)が保管温度によって親水性の低下速度(元の状態に戻る速度)にどの程度の差が生じるのかを確認してみました。よろしくお願いします。
先に結論を言ってしまうと、UV洗浄改質後の親水性の低下速度は保管する温度が高ければ速くなり、逆に温度が低ければ遅くなります。
これは対象物の保管温度が高いと親水基の対象物内部への移動が速くなる為で、この場合だと親水性の低下速度も速くなります。逆に対象物の保管温度を低くすると親水基の対象物内部への移動が遅くなる為、親水性の低下速度も遅くなります。
参考文献
- 日本学術振興会プラズマ材料科学第153委員会編:プラズマ材料科学ハンドブック,株式会社オーム社,1992,p.648
- 日本接着学会編:越智光一監:表面解析・改質の化学,日刊工業新聞社,2003,p117
それでは保管温度が洗浄改質効果にどのように影響を及ぼすのかを見ていきましょう。
測定条件等
材質
アクリル
確認方法
アクリル板にUV洗浄改質処理を実施。それぞれ異なる温度条件下で保管。冷蔵庫内、一般環境(室内・乾燥炉内)経過時間毎の静的接触角を測定する。測定期間は174時間。UV照射は下記条件にて処理。経過時間毎に測定ポイントを定める。
照射装置及び照射条件
- UV洗浄改質装置:ASM1101N
- UV照射時間:300sec
- ランプとの距離:50mm
測定結果
UV照射後の濡れ性経時変化データ(アクリル)
照射前 | 照射直後 | 1h | 3h | 5h | 7h | 24h | |
室温(25℃) | 70.4 | 28.1 | 27.3 | 31.0 | 29.9 | 30.6 | 32.0 |
冷蔵庫(3℃) | 72.3 | 28.9 | 35.1 | 36.4 | 35.2 | 38.0 | 37.5 |
乾燥機(50℃) | 66.9 | 27.4 | 32.9 | 37.0 | 39.3 | 38.7 | 39.2 |
30h | 48h | 54h | 72h | 78h | 96h | 102h | 168h | 174h | |
室温(25℃) | 35.9 | 35.8 | 32.7 | 32.0 | 32.0 | 34.8 | 34.9 | 35.9 | 37.1 |
冷蔵庫(3℃) | 37.3 | 33.5 | 36.8 | 34.9 | 34.7 | 35.3 | 34.2 | 37.7 | 37.0 |
乾燥機(50℃) | 45.1 | 46.5 | 45.9 | 42.9 | 39.7 | 50.1 | 49.8 | 42.2 | 39.6 |
UV照射後の濡れ性経時変化グラフ(アクリル)
まとめ
時間経過とともに多少の上下はありますが、乾燥炉内で保管したサンプルの親水性の低下が目立つ結果となりました。
アクリルでは親水性の低下の速度までは顕著な差は出ませんでしたがこれにより、アクリルのみではありますが冒頭で述べた親水性の低下は温度による影響を受けることが確認できると思います。
装置ご導入にあたり当社ラボにて実際の照射対象物での測定等承っております。
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