こんにちは。
あすみ技研のS.Tです。
以前、「水銀事故」に関するコラムで初めて執筆を担当させていただきました。
今回も続けてコラムを担当することになりましたので、少しでも分かりやすくお伝えできるよう、実際の試験結果を交えながらご紹介していきます。
さて今回は、「UV表面改質による接着力向上の効果を、引張せん断試験で評価する」というテーマです。
接着剤を使用する工程では、素材表面の状態によって接着強度が大きく変わることがあります。
表面に汚れや有機物が残っている場合や、素材表面のぬれ性が十分でない場合には、接着剤が均一になじみにくくなり、期待した接着力が得られないことがあります。
UVオゾン洗浄・表面改質は、紫外線とオゾンを利用して素材表面の有機物を除去し、表面状態を改善する処理です。
処理によって表面のぬれ性や密着性が改善されることで、接着剤との接着強度向上につながる場合があります。
そこで今回は、実際に銅試験片へUV照射を行い、未処理の試験片との接着強度の違いを比較してみました。
評価には「引張せん断試験」を用います。
引張せん断試験とは、2枚の試験片を一定の面積で重ね合わせて接着し、試験機で両端から引っ張ることで、接着部がどの程度の力に耐えられるかを測定する試験方法です。
測定した破断力を接着面積で除することで「せん断強さ」を求めることができ、素材と接着剤との接着強度を比較するための指標として利用できます。
自動車部品や電子・電気部品をはじめ、さまざまな分野で接着性能を評価する方法のひとつとして用いられています。
今回の実験では、「UV処理を行った銅試験片」と「UV処理を行っていない銅試験片」の2種類を用意し、できるだけ同じ条件で接着しました。
その後、社内の引張試験機を使用してそれぞれの破断力とせん断強さを測定し、UV表面改質が接着力にどのような影響を与えるのかを比較していきます。
試験条件
今回の試験では、銅試験片を使用し、UV未照射とUV照射120秒の2条件で比較を行いました。
使用した装置、接着剤、照射条件、引張試験条件は以下の通りです。
| 試験片 | 使用機器・試験条件 | 接着剤 |
|---|---|---|
| 材質:銅 接着面積:12.5 mm × 50 mm |
引張試験機 MCT-2150W(A&D) 試験速度:10 mm/min UV装置 ASM2001N 照射距離:30 mm 照射時間:120秒 |
セメダイン 速乾Gクリア (合成ゴム系接着剤) |
UV未照射の試験片と、UV照射後に接着した試験片をそれぞれ5つ作成し、
N=5で引張試験を実施します。
接着
まずは試験片を貼り合わせる接着の工程です。
UV未照射の試験片5組と、UV装置で120秒照射した試験片5組をそれぞれ貼り合わせます。
引張せん断試験では、接着層の厚みがせん断強さに影響するため、試験条件をできるだけ揃える必要があります。
今回は、電子天秤で接着剤の塗布量を確認しながら塗布し、その後ヘラを使って薄く均一に広げました。
硬化
接着後は、接着剤が十分に硬化するまで待ちます。
試験片はクリップやクランプで固定し、接着剤メーカーが指定する硬化時間を参考にして圧締しました。
![]()
引張せん断試験では、接着剤の塗布量や接着層の厚みの違いが測定結果に影響する可能性があります。
そのため今回は、試験条件をできるだけ揃えるために、電子天秤で接着剤の塗布量を確認しながら調整しました。
塗布後はヘラを使って接着剤を薄く均一に広げ、各試験片で接着状態に大きな差が出ないようにしています。
![]()
接着剤を塗布した後は、2枚の試験片を所定の接着面積になるように貼り合わせます。
貼り合わせた試験片は、接着位置がずれないようにクリップやクランプで固定し、接着剤が十分に硬化するまで圧締します。
このように接着条件を揃えることで、UV照射の有無による接着強度の違いを比較しやすくしています。
引張せん断試験
試験片の準備ができたら、引張試験機に固定して測定を行います。
試験では、試験片が破断したときの最大荷重である「破断力」を記録します。
今回のせん断強さは、破断力[N]を接着面積[mm²]で除して算出します。
この値を用いて、UV照射前後で接着強度がどのように変化したかを比較します。
![]()
試験中の様子。
試験片は強い力で両端から引っ張られていきます
では実際にUV照射を行う前後で、せん断強さの値がどのように変化したかを
比較してみましょう。
結果
こちらが、UV照射を行っていない銅試験片の引張試験測定結果です。
UV未照射
| 被着体 | せん断面積 [mm²] |
破断力 [N] | せん断強さ [MPa] |
|||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | 平均 | |||
| 銅 UV照射なし |
312.5 | 160.6 | 150.7 | 151.7 | 144.4 | 162.3 | 153.94 | 0.492608 |
そしてこちらが、UV照射を行った銅試験片の引張試験測定結果です。
UV照射120秒
| 被着体 | せん断面積 [mm²] |
破断力 [N] | せん断強さ [MPa] |
|||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | 平均 | |||
| 銅 UV照射120秒 |
312.5 | 158.5 | 177.5 | 186.9 | 202.4 | 206.0 | 186.26 | 0.596032 |
![]()
UV未照射の試験片では、平均破断力153.94 N、せん断強さ0.493 MPaとなりました。
一方、UV照射120秒の試験片では、平均破断力186.26 N、せん断強さ0.596 MPaとなり、せん断強さは未照射と比較して約21%向上しました。
今回の試験条件では、UV照射後の試験片で接着強度の向上が確認されました。
UV照射による銅表面の改質が、銅と接着剤との密着性向上に寄与したものと考えられます。
いかがでしたでしょうか。
本コラムでは、引張試験の測定結果から、素材と接着剤との密着力を評価してみました。
ちなみに、今回の測定で用いた測定器具などは、全て弊社ラボにご用意がございます。
今回行ったようなUV洗浄の評価試験を、お客様独自の基材にてお試しいただくことが可能です。
基材の接着力向上でお悩みのお客様や、 引張試験を用いて改質の評価測定を行いたいというお客様は、まずはぜひ弊社までご相談ください。
それでは、今回のコラムはここまでとさせていただきます。
ご覧いただきありがとうございました。